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東京地方裁判所 昭和57年(ワ)6005号 判決 1984年7月27日

原告

広瀬マサ

ほか四名

被告

與那覇悟

主文

一  被告は、原告広瀬マサに対し六〇万一四八九円、原告広瀬孝に対し五一万五七四五円、原告塚本喜久江に対し五一万五七四五円、原告尾崎敏子に対し五一万五七四五円、原告田辺百合子に対し五一万五七四五円及び各右金員に対する昭和五四年一〇月一日から右支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告らのその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを六分し、その五を原告らの負担とし、その余を被告の負担とする。

四  この判決は、主文第一項に限り仮に執行することができる。

事実

第一当事者双方の求める裁判

一  原告ら

「被告は、原告広瀬マサに対し四六三万九八一九円、原告広瀬孝に対し二二六万九九〇九円、被告塚本喜久江に対し二二六万九九〇九円、原告尾崎敏子に対し二二六万九九〇九円、原告田辺百合子に対し二二六万九九〇九円及び各右金員に対する昭和五四年九月二九日から右支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は、被告の負担とする。」との判決及び仮執行の宣言。

二  被告

「原告らの請求をいずれも棄却する。訴訟費用は、原告らの負担とする。」との判決。

第二請求の原因

一  交通事故の発生

1  日時 昭和五四年九月二八日午前八時〇三分ごろ

2  場所 東京都八王子市長房町一八六九番地先路上

3  加害者 大型貨物自動車(以下「本件ダンプカー」という。)、車両番号相模一一な七八六九。右運転者被告與那覇悟

4  被害者 訴外亡広瀬五郎(当時七五歳、以下「亡五郎」という。)

5  事故態様 被告が本件ダンプカー(車両重量約六・七トン、最大積載量八トン)を運転して走行中、現場は急なカーブで徐行の表示があるのにこれを無視し、時速四〇ないし五〇キロメートルの高速度のまま慢然進行した過失及び前方不注視の過失により、自車の前部を折から前方道路を横断中の亡五郎に正面衝突させ、後記のとおり死亡させた。

(以下右交通事故を「本件事故」という。)

二  責任原因

被告は、本件ダンプカーを運転中、前記徐行義務違背の過失及び前方不注視の過失により、本件事故を発生させ、後記のとおり亡五郎及び原告らの権利を侵害し、よつて後記損害を亡五郎及び原告らに被らせたものである。

三  権利の侵害及び損害の発生

1  亡五郎は、本件事故により、脳挫傷、脳内出血の傷害を受け、その三日後である昭和五四年一〇月一日午前五時三五分入院先の病院において死亡した。

2  亡五郎は、右の権利侵害により、次の損害を被つた。

(一) 積極損害 一六三万四五七一円

(1) 治療費 七九万三五六〇円

(2) 看護料 一万一二〇〇円

(3) 文書料 一三〇〇円

(4) 休業損害 二万六五一一円

(5) 雑費 二〇〇〇円

(6) 葬祭料 八〇万円

(二) 逸失利益 六二八万五八九六円 となる。

亡五郎は本件事故当時七五歳の高齢者であつたが、給与所得のほか農業経営の事業所得により、相当の年収があつた。

(1) 亡五郎は、地元八王子市の高齢者事業団に所属勤務し、賞与を含む給与収入を得ていたが、本年事故前一か年(昭和五三年四月一日から昭和五四年三月三一日まで)の実収入額は、本給年額七五万四一二一円、臨時賃金(賞与相当分)夏期支給分二六万八六八五円、冬期支給分四一万四三二八円の合計一四三万七一三四円である。

(2) 一方亡五郎は、農業を営み、兼業農家として、栗、梅等の果樹の栽培に従事していたもので、本件事故当時における亡五郎の農業収入は、少くとも年間一五〇万円を越え、経費は約三割であつたから、その純益は控え目にみても年額一〇〇万円を下らなかつた。

(3) 右によれば、亡五郎の逸失利益は、左記のとおり六二八万五八九六円となる。

(143万7134円+100万円)×3.5643×4.135/4×(1-0.3)=628万5896円

(三) 慰藉料 一〇〇〇万円

亡五郎の慰藉料は一〇〇〇万円が相当である。

3  相続

亡五郎の相続人は、妻原告広瀬マサ、亡長男武夫の子二名(代襲相続人)、次男原告広瀬孝、長女原告塚本喜久江、次女原告尾崎敏子、三女原告田辺百合子の七名であるところ、亡長男武夫の子二名は相続を放棄しており、各自の相続分は、原告広瀬マサが三分の一、その余の原告らがそれぞれ六分の一であり、原告らはそれぞれ右の相続割合により亡五郎の損害賠償債権を相続した。

4  本件事故による亡五郎の死亡により、原告らは、それぞれ多大の精神的打撃を受けたが、この慰藉料は、原告広瀬マサが二〇〇万円、その余の原告らが各自一〇〇万円をもつて相当とする。

5  損害の填補

原告らが、4の割合により相続した亡五郎の損害賠償請求債権に対しては、自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)の規定に基づき合計一一二〇万一〇〇八円の保険金が支払われた。

6  弁護士費用

被告において任意の支払をしないため、原告らは、本件の訴訟代理人である弁護士に依頼して本訴を提起しなければならないこととなつたが、その報酬一〇〇万円については、原告広瀬マサが四〇万円を、その余の原告ら各自が一五万円宛を支払うべき旨を約した。

四  結論

よつて、被告に対し、原告広瀬マサは四六三万九八一九円、原告広瀬孝は二二六万九九〇九円、原告塚本喜久江は二二六万九九〇九円、原告尾崎敏子は二二六万九九〇九円、原告田辺百合子は二二六万九九〇九円及び右各金員に対する本件事故発生の日の後である昭和五四年九月二九日から支払ずみまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

第三被告の答弁及び主張

(答弁)

一  交通事故の発生について

1、2、3、4の各事実及び5の事実中亡五郎が死亡したことを認める。5の事実中その余の事実を否認する。

二  責任原因について

事実を否認し、主張を争う。

三  権利の侵害及び損害の発生について

1の事実は認める。その余の事実中、原告ら主張の身分関係は認め、その余の事実を争う。

四  結論について

主張を争う。

(主張)

一  被告には、本件事故につき過失はない。

1 本件事故直前における被告運転の本件ダンプカーの速度は、本件事故現場の道路の制限速度である毎時三〇キロメートル以内であつた。したがつて、被告には原告ら主張の速度違反、徐行義務違反はない。

2 亡五郎は、被告運転の本件ダンプカーの前方約一三メートルの地点の反対車線から、突如自転車で右ダンプカーの前部中央右寄りに飛び出してきて衝突したものである。被告は、右亡五郎を発見するや直ちにブレーキを踏み停車したところ、亡五郎の自転車のブレーキは故障していたために自転車を停止させることができず、本件事故となつたものである。したがつて、被告には、原告ら主張の前方不注視の過失はない。

二  仮に被告に本件事故について何らかの過失があつたとしても、亡五郎にも重大な過失があつた。

1 本件事故現場の道路は、国鉄高尾駅方向より元八王子方面に向かつて上り坂になつていて、亡五郎は、元八王子方面より、右の道路を自転車で下つてきたのであつた。本件事故当時元八王子方面より高尾駅に向かう右道路の車線は、自動車が渋滞し、高尾駅方向より元八王子方面に向う車線は空いていたのである。そこで亡五郎は、自己が自転車で走行する車線が渋滞していたところから、渋滞中の自動車の間を縫つたり、反対車線を通つたりして、下り坂を走行してきたのである。そして本件事故現場附近にさしかかつた際、自転車で本件ダンプカーの走行してきた車線に、中央線を超えて走つてきたのであつた。

2 自転車に乗つて道路を通行する者は、その道路の左側端を一列に走行することが法律上も義務づけられているところ、亡五郎は、右のような自転車走行者の義務を怠り、渋滞する自動車の間を縫つて、中央線を超えて反対車線を走行するという重大な過失を犯したのである。

3 しかも、本件事故当時は降雨も激しく、自転車に乗つて通行する場合には視界が著しくさえぎられているのであるから、反対車線の下り坂を走るなどという無暴なことは避けるべきであつた。

4 また、亡五郎の通行する車線が、渋滞する自動車のために通行が困難であつたならば、前記の道路を、自転車を降りて横断し、反対車線左側に設置された歩道を歩行者として通行すべきであつたのである。

5 以上のとおり、亡五郎には重大な過失があり、この過失は、少なくとも八〇ないし五〇パーセントと評価して過失相殺がなされるべきである。

第四被告の主張に対する原告の認否及び反論

(認否)

一  被告には本件事故につき過失がない旨の主張を否認する。

本件事故現場は、急カーブで見とおしが悪いため、被告の進行方向からみた道路左側に「この先右急カーブ徐行」と、黄色の看板に黒字で標示した道路標識が設置されている。したがつて、自動車の運転者としては、右の標識に従い徐行すなわち道路状況に応じて直ちに停車し得る速度、具体的には歩行者の歩行速度を若干上回る時速五ないし六キロメートル程度の速度をもつて走行しなければならない。しかるに被告は、右標識を全く無視し、無謀にも時速四〇ないし五〇キロメートルもの高速度で進行したものであつて、その過失の程度は極めて重い。

また、被告は、本件事故現場道路を進行するにあたり、亡五郎を本件ダンプカー右前部と正面衝突させるまでの間及び衝突後停車するまでの間のいずれについても急制動の措置を講じた形跡は全くなく、本件事故現場付近に制動痕は全くなかつた。被告は、右の地点で衝突するまで、進路前方の被害者亡五郎の存在及び動静に全く気付いておらず、重大な前方不注視の過失があることは明白である。

なお、亡五郎は、元八王子方面から高尾駅方面へ向けての自車進行車線が車で渋滞し、道路左端を自転車で走行するうえに多大の支障がある道路状況であつたため、反対車線の歩道上を走行すべく、一旦自転車から降りて渋滞車両の間隙を縫つてセンターライン上に出た後、反対車線の歩道へ移る機会をうかがいながら、センターラインに沿つて自転車を手で押して歩行していたものであり、急に本件ダンプカーの進路前方に飛び出したわけではない。亡五郎の自転車のブレーキが故障していた旨の被告の主張は否認する。

二  亡五郎に、被告主張の重大な過失があつたことは否認する。

本件事故現場となつている道路が、国鉄高尾駅方向より元八王子方面に向つて上り坂になつていて、亡五郎が、元八王子方面より右の道路を自転車で下つてきたこと、本件事故当時元八王子方面より高尾駅に向う右道路の車線は、自動車が渋滞し、高尾駅方向より元八王子方向へ向う車線は空いていたこと、自転車に乗つて道路を通行する者は、その道路の左側端を一列に走行することが法律上義務付けられていること、亡五郎が右の義務を怠つたことは認めるが、その余の事実を否認する。

原告らも、亡五郎に落ち度のあつたことを否定するものではないが、本件事故直前の被害者亡五郎の動静を直視し、これと被告の速度違反、徐行義務違反、前方不注視等の重大な過失責任とを対比勘案すれば、過失相殺における亡五郎の過失割合は二〇パーセント程度にすぎないものである。

第五証拠関係

記録中の証拠目録に記載のとおりであるから、これをここに引用する。

理由

一  請求原因一の1ないし4の事実及び5の事実中亡五郎が本件事故により昭和五四年一〇月一日死亡したことは当事者間に争いがない。

二  そこで、本件事故発生の具体的態様と被告の責任について判断する。

成立に争いない甲第九号証、同第一〇号証の二、同第一六号証、同第一九号証、乙第二号証、原告広瀬孝及び被告各本人尋問の結果を総合すると、次の事実を認めることができる。

本件事故現場は、国鉄中央線高尾駅前から北西に走る通称オリンピツク街道上で、車道幅員約六・九三メートル、歩道幅員約八〇センチメートルの歩車道の区別のある道路上であること、右道路は、右高尾駅前から元八王子方面に向つて上り坂となつているが、右にカーブしているうえ東側には家屋等が建ち並び、かつ、北西方向には山があるため見通しがよくなく、右にカーブする手前の路面に右カーブの標示があり、道路左側に右急カーブのため徐行するようにとの看板があつたこと、被告は、右高尾駅前方面から元八王子方面に向けて本件ダンプカーを運転して走行していたが、進路前方には先行車がなかつたため、特に徐行することなく漫然と時速約三〇キロメートルのまま本件事故現場にさしかかつたこと、他方亡五郎は、自転車に乗つて元八王子方面から高尾駅方面に向けて走行してきたのであるが、事故現場付近では自車進行車線が車で渋滞し、道路左側を自転車で走行することに支障があつたため、反対車線側を走行しようと考え、一旦自転車から降り渋滞車両の間隙を縫つてセンターライン付近に出たが、反対車線を走行してくる自動車の有無を十分確認しないまま漫然と反対車線の被告運転車両の進路前方に自転車を押して車道を斜めに横断しようとしたこと、被告は、自転車を押して車道を横断しようとする亡五郎を進路右前方約一三・五メートル先に初めて発見したが、避譲措置をとる時間的余裕もないまま、自車の右前部バンパーを右自転車の前部に衝突させたこと、以上の事実が認められ、右認定に反する乙第二号証の記載部分及び被告本人の供述部分は措信し難く、他に右認定を覆えすに足りる確証はない。

右事実によると、被告は、見通しのよくない急カーブの坂道を本件ダンプカーを運転して走行していたのであるから、進路前方から自己の進行車線に進入してくるやもしれない歩行者や自転車搭乗者等との接触事故の発生を未然に防止するため、絶えず前方を注視するとともに自転車等との衝突等の危険が迫つたときには直ちに停車することができる程度に減速徐行すべき注意義務があるのにこれを怠り、本件事故を発生せしめたものであることが明らかであるから、被告は、民法第七〇九条により、本件事故により発生した損害を賠償すべき責任を負うものというべきである。

三  進んで、本件事故により発生した損害について判断する。

(一)  積極損害

成立に争いない甲第七号証の一ないし三、甲第一三号証に本件弁論の全趣旨を総合すれば、亡五郎は本件事故後死亡するまでの間治療費として七九万三五六〇円、看護料として一万一二〇〇円、文書料として一三〇〇円、雑費として二〇〇〇円をそれぞれ支出したものと認められ、右認定に反する確かな証拠はない。

また、成立に争いない甲第一一号証、甲第一二号証の一、二、甲第一三、第一四号証に本件弁論の全趣旨を総合すれば、亡五郎は、地元八王子市の高齢者事業団に所属勤務する傍ら農業を経営していたが、本件事故により事故当日から死亡するまで休業することを余儀なくされ、その間一万二〇〇〇円の休業損害を被つたことが認められ、また、亡五郎の葬儀費用として八〇万円を下らない支出をしたものと認められが、右葬儀費用については七〇万円の限度で本件事故と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。

(二)  逸失利益

成立に争いない甲第八号証、甲第一八号証の一ないし五原告広瀬孝本人尋問の結果を総合すると、亡五郎は、本件事故当時七五歳の高齢であつたが、八王子市の高齢者事業団に所属勤務する傍ら兼業農家として栗、梅等の果樹の栽培に従事し、事故前の一年間に一四三万七一三四円の給与収入と事故当時年間一〇〇万円を下らない農業収入(純収入)を得ていたことが認められ、右認定を覆えすに足りる確たる証拠はない。

そして弁論の全趣旨によれば、亡五郎は、本件事故に遭遇しなければ、将来更に四年間程度稼働してその間右年間収入を下回らない収入を得ることができたものと認められるところ、その生活費は収入の約三割を相当とするので、これを基礎としてライプニツツ式計算法により年五分の中間利息を控除して亡五郎の逸失利益の現在価額を算出すると、次の計算式のとおり六〇四万九二八三円(一円未満切捨て)になることが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

(143万7134円+100万円)×3.5459×(1-0.3)=604万9283円

(三)  亡五郎の慰謝料

前認定のとおり、亡五郎は、本件事故により死亡するに至つたものであるところ、弁論の全趣旨によれば、これにより亡五郎は多大の精神的苦痛を被つたものと認められ、これを慰藉するには四〇〇万円が相当であると認められる。

(四)  過失相殺

前記二において認定した事実関係によれば、亡五郎は、渋滞車両の間隙を縫つてセンターラインを通過するにあたつて十分左右の安全確認をしなかつた過失があつたというべきであるから、本件においては二〇パーセントの割合による過失相殺をするのが相当であると認める。

そうすると、亡五郎の本件事故による前記(一)ないし(三)の損害の合計は一一五六万九三四三円であるから、過失相殺後の差引残額は計数上合計九二五万五四七四円(一円未満切捨て)となる。

(五)  相続

原告らと亡五郎との身分関係は原告らの主張するとおりであることは当事者間に争いがなく、原告広瀬孝本人尋問の結果と弁論の全趣旨によれば、原告らが主張するとおりの相続の事実関係が存在することを認めることができる。右によれば、原告らは、それぞれその主張のとおりの相続の割合で亡五郎の損害賠償債権を相続取得したものというべきである。

そうすると、原告らの相続により取得した損害賠償債権は、原告広瀬マサにつき三〇八万五一五八円(円未満切捨て)、その余の原告らはそれぞれ一五四万二五七九円(円未満切捨て)となる。

(六)  原告らの慰藉料

原告らは、本件事故で亡五郎を失つたことにより多大の精神的苦痛を被つたものと認められ、これによる慰藉料は原告広瀬マサにつき一五〇万円、その余の原告らにつき各自一〇〇万円をもつて相当とするが、本件事故の発生につき亡五郎にも過失があつたことは前認定のとおりであるから、これを被告側の過失として過失相殺すると、原告らの慰藉料は原告広瀬マサにつき一二〇万円、その余の原告らにつき各自八〇万円をもつて相当と認める。

(七)  損害填補

原告らは、本件事故による損害の填補として自賠法の規定に基づき一一二〇万一〇〇八円の保険金を受領したことは当事者間に争いないところ、本件弁論の全趣旨によれば、右保険金は原告らの相続分に従つて原告広瀬マサにつき三七三万三六六九円(一円未満切捨て)、その余の原告らにつき一八六六万六八三四円(一円未満切捨て)あて各損害賠償債権に充当されたものと認めるのが相当である。

そうすると、原告らの有する残損害額は、原告広瀬マサにつき五五万一四八九円、その余の原告につきそれぞれ四七万五七四五円となる。

(八)  弁護士費用

原告らは、被告から任意の弁済を受けられないため、本訴の提起、進行を原告ら訴訟代理人弁護士に委任したことは本件記録上明らかであるところ、本件訴訟の難易、前記認容額、本件訴訟の経緯等諸般の事情を考慮すると、本件事故と相当因果関係のある弁護士費用としては、原告広瀬マサについては五万円、その余の原告らについては四万円をもつて相当と認める。

四  以上のとおりであるから、被告は、原告広瀬マサに対し六〇万一四八九円、原告広瀬孝に対し五一万五七四五円、原告塚本喜久江に対し五一万五七四五円、原告尾崎敏子に対し五一万五七四五円、原告田辺百合子に対し五一万五七四五円及び右各金員に対する昭和五四年一〇月一日から支払ずみまで年五分の割合による遅延損害金の支払義務があるから、原告らの被告に対する本訴請求は、右の支払を求める限度で理由があるからこれを認容するが、その余の部分は失当として棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条、第九二条、第九三条を、仮執行の宣言につき同法第一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 塩崎勤)

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